Photo by ZHIJIAN DAI on Unsplash

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Ximera Media Next Trends #78|Ikuo Morisugi| 2025.10.29

独自性のある高品質なコンテンツと構造化データ、AIプラットフォームとの積極的な連携、人間のユーザーに直接訴求できる自社チャンネルの価値

はじめに: AIブラウザ登場の背景

ChatGPT、Gemini、Claude、Perplexityといった汎用AIについて、モバイルはAIの専用アプリの導入が進む一方で、多くのユーザーは既存サービスを利用するためにWebブラウザ(Chrome/Safariなど)も併用しています。また、デスクトップでは多くの人が、汎用AIも既存サービスもWebブラウザで利用しています。このように現状の汎用AIは、「端末内の1つのアプリもしくはブラウザ内の1つのタブ」でしかありません。さらに高度な機能をユーザーへ提供するためには、よりベースとなるレイヤーのサービスを押さえる必要があります。そのアプローチの1つとして、各社はブラウザという入口をAI化する「AIブラウザ」の提供をはじめています。

このAIブラウザ登場については、単に回答精度を競うAI検索とは異なり、下記のような5点の背景が考えられます。

1. 文脈理解によるブラウザ体験の変革

従来、ブラウザの一つのタブとして、もしくは汎用AIのアプリを開いて、必要に応じて汎用AI回答のリンクから別ページへ遷移したり、別タブへキーワードを打ち込んで検索する、など目的に応じてページ・タブ間を行ったり来たりする手順が一般的でした。しかし、もしAIをブラウザ側に埋め込めば、「いま開いているページ」や「複数タブ全体」「直近の閲覧履歴」といった文脈をAIが直接参照し、要約・比較・追加質問まで画面を離れずに行えます。

2. 閲覧から実行までを一本化

要約やユーザー質問への回答だけなく、予約・購入・申込みなどの実行系タスクは、最終的にユーザーによるブラウザの操作や認証フローを伴います。エージェントがブラウザそのものに組み込まれていれば、サイト間の遷移や入力を自動的に実行することができます。このようにサイトをまたぐアクションを支援することは、ユーザーフローを握ることにつながり、汎用AI各社にとって競争優位性につながります。

3. 将来のマネタイズ機会の獲得

ブラウザはユーザー接点の入口であり、デフォルトの検索エンジンやブラウザ内で利用されるAIモデルはブラウザ提供企業側でコントロールされるため、もし一定のシェアを持てれば巨大なビジネス価値が生じます。過去の事例では、GoogleはSafariのデフォルト検索エンジンとなるために年間180億ドル(約2.7兆円)規模の対価をAppleに支払ってきたと報じられており、2024年の反トラスト訴訟でもその契約金額の巨額さが注目を集めました。汎用AI各社が独自のブラウザを持つことは、自社AIを標準導線に据えるための合理的な戦略であり、それが成功すれば大きな経済的メリットがもたらされます。

4. 外部サイト遷移減少へのフォローアップ

AI検索(特にGoogleのAIモード)によって検索結果から外部サイトへのトラフィックが減少している報道もあり、ユーザーは「AIの答えを見るだけで終わる」傾向を強めています。汎用AI各社はユーザーを自社のブラウザ面にユーザーをとどめ、検索から行動までを自社アプリ内で完結させるほど、滞在時間・収益機会・データ取得の面で優位になるため、さらにその動きを強めています。

5. 継続的な文脈の獲得

AIブラウザは閲覧中の内容や直近の活動を踏まえて回答できるように設計されており、「昨日見たXXっぽいことが書いてあったページ」といった曖昧な依頼にも応答できる方向へ進化しています。この継続的な文脈(continuous context)は、独立したチャットAIよりブラウザに常駐するAIのほうが取得しやすく、再訪・回遊・比較といった行動をAIが先回りで支援できます。

このように、汎用AI各社は良い答えを返すだけでは不十分だという前提に立ち、よりユーザー行動のコンテキストを継続的に補足し、自動実行できるアクションを多彩にし、自社AIへの囲い込みを目的としてAIブラウザの提供を行っています。

代表的なAIブラウザ

1. ChatGPT Atlas

https://www.youtube.com/watch?v=Ej6hnsQgV_c

OpenAIのChatGPT Atlasは、ChatGPTをブラウザに直接統合したスタンドアロンのAIブラウザ(2025年10月現在Mac版のみ提供)です。フルページのチャット表示、通常のWebブラウジング、ページ横に並走するサイドチャットの3つのモードで動作し、閲覧中ページや複数タブ、直近の履歴といった文脈を踏まえて要約・比較・追加質問への回答を行います。ユーザーは別タブに切り替えることなく、その場で「このページの要点を3行で」「この仕様と他社サイトの仕様を並べて比較して」など依頼でき、結果は引用元とともに提示されます。

Atlasはブラウザ操作そのものと深く結びついています。タブの開閉・並べ替え・ピン留め、特定URLへの移動、ブックマークの追加といった基本操作はもちろん、サイト内でのフォーム入力、クリック、スクロールなど実行系も行えます。必要に応じてAtlasはエージェントモードでのブラウザ操作が実行可能で、ユーザーが許可すれば複数ページにまたがる一連の手続きを自律的に進めます(例:見積り比較→申込みフォームの下書き→確認)。重要な操作(ログインや決済や注文フォームなど)は都度許可を求める設計で、途中で人が引き継ぐこともできます。