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Ximera Media Next Trends #75|Ikuo Morisugi| 2025.07.28
プラットフォームを自前で構え、ニッチながらも他社にない独自コンテンツを集め、ファンを囲い込む
2025年のデジタルメディア市場では、TikTok / Youtube / Instagramなどのアルゴリズムドリブンなマス向けプラットフォームが大きく成長する一方で、テーマ特化型のサブスクリプションサービスも成長が続いています。
アメリカ人の1/3が一般的な大手動画ストリーミング配信とは別に子ども向け、語学、ホラー専門、ペット管理など 領域特化のサブスクを契約しています。こうしたユーザー行動の変化を背景に、投資家は継続的な収益と高い顧客生涯価値(LTV)を持つサービスに注目しています。
現在のように大量のコンテンツが溢れる中で、ユーザーは信頼できるキュレーションやコミュニティとの深い結びつきを持つプラットフォームへ魅力を感じていると考えられます。さらに、EUのデジタル市場法(DMA)やAppleのプライバシー保護の取組(ATT)に象徴されるようにプラットフォーム規制が進んでいるため、投資家からは、ソーシャルメディアや検索エンジン(近年ではAIも含まれる)などの外部アルゴリズムへ依存せず、ファンデータを自社保有するモデルがリスクヘッジの観点からも評価されています。結果として、専門ジャンルを深掘りし、コミュニティ機能を通じて継続課金を最大化できるサービスが、ユーザー獲得とベンチャーキャピタル等からのリスクマネー獲得の双方を加速させている状況です。
具体的にメディア領域で見ても、サブスク基盤を軸にサービス提供するスタートアップへの大型の資金流入が続いています。
本稿では、こうした潮流の代表例として独立系ライターの有料ニュースレター配信プラットフォームSubstackと、インディー映画をキュレーションしつつスタジオ化するMUBIの2社を取り上げます。それぞれがどのようにしてファンエンゲージメントとリテンションを最大化するためにビジネスモデルを変化させているのかを見ていきます。

Substackはニュースレター配信プラットフォームからソーシャルメディアへ変化 / App Store
2017年にサンフランシスコで創業したSubstackはクリエイターが読者と直接つながる経済圏を作るべく、定期購読型のニュースレター配信を中心に音声・動画・コミュニティ機能を統合したサービスを提供しています。
独立したクリエイター(特にテキスト中心のライター)の課題は、(1) ソーシャルメディアや検索アルゴリズム依存による読者リーチの不安定さ、(2) 旧来の(特に広告への収益依存性が強い)ライティングプラットフォームでの収益性の低さ、(3) オーディエンスデータをライター自身が所有できないことによるCRMマーケティングの不足でした。
Substackはそれらの課題へのソリューションとしてニュースレターの作成・配信・決済・サブスク管理を一気通貫でSaaS提供し、有料ニュースレター売上の10%+決済手数料を得るビジネスモデルを確立しました。
ライターのSubstack成功事例としては CNN出身のJim Acostaや The New York Times出身のBari Weissが挙げられ、報道機関出身ライターがデジタルネイティブクリエイターへ転身するケースも相次いでいます。特にBari Weissの主催するThe Free PressはSubstackでもトップクラスの[100万人の登録者と136,000人以上(2024年12月時点)の有料購読者がおり、少なくとも1000万ドル(約15億円)以上の年間収益](https://www.axios.com/2024/12/10/the-free-press-hires-publisher-amid-expansion%23:~:text=By%2520the%2520numbers:%2520Weiss%2520declined%2520to%2520provide%2520information%2520about%2520financials%2520but%2520with%2520more%2520than%2520136,000%2520subscribers%2520paying%2520around%2520$8%2520per%2520month,%2520it's%2520safe%2520to%2520assume%2520The%2520Free%2520Press%2520takes%2520in%2520at%2520least%2520$10%2520million%2520annually%2520from%2520just%2520subscription%2520revenue.)があると推定されています。これは伝統メディアの信頼性と個人ブランドの両立が可能であることを示しています。
近年のSubstackのプロダクトの大きな変化としてiOS/Androidアプリのリリースと、ソーシャルメディアライクな フィード「Notes」を導入したことが挙げられます。アプリの中でのフィードや購読すべきライターのレコメンデーションにより、ライターは既存購読者以外のフォロワーを獲得しやすくなりました。実際に[新規購読者の50%以上、有料購読者の30%はSubstack内のネットワークから獲得](https://substack.com/?learn_more=1%23:~:text=Yes.%252520More%252520than%25252050%2525%252520of%252520all%252520new%252520free%252520subscriptions%252520and%25252030%2525%252520of%252520paid%252520subscriptions%252520to%252520Substacks%252520come%252520from%252520within%252520our%252520network.)されています。Substackは元々分散型でライターそれぞれが独自にユーザ獲得を行う設計でしたが、上記のように徐々にライターやコンテンツを横断するソーシャルメディア的なプラットフォームへ変化してきています。
このように基盤プロダクトで確実にユーザ需要を満たしつつ、並行してユーザ拡大のための新たなプラットフォーム化を進めたことで、2025年3月時点で有料購読数は 500 万件を突破し、400万件を突破した2025年11月からわずか4ヶ月でこれを達成しました。
さらに広告事業の構想がインタビューで示唆され、従来広告を出さないことを標榜してきた同社が サブスク+広告の複合収益モデルへ舵を切る可能性が業界の注目を集めています。一方、Substackの創業ストーリー的にもソーシャルメディアや広告への批判からはじまっている部分もあり、Substackのビジョンに共感しているライターから同意が得られるかは議論が分かれる部分と思われます。